タンデム学習のヒント

タンデム学習を効果的に進めるためのコツを紹介します。

1)学習時間はできるだけ目標言語を使いましょう。

タンデム学習ではそれぞれの言語を学習する時間を明確に分けてください。そして、自分の学習時間には目標言語をできるだけ多く話しましょう。これまで実際に目標言語を話したがない人もいるかもしれません。でも、話す練習をしなければうまくなりません。短いフレーズから、少しずつ覚えて、積極的に使ってみましょう。恥ずかしがらず、どんどんチャレンジしてみてください。反対に、パートナーの学習時間には、パートナーにできるだけたくさん目標言語を話してもらいましょう!

2)自分の考えをはっきり伝えましょう。

「来週土曜日はいそがしい」「AというテーマよりBの方がいいと思う」など、自分の考えをパートナーにはっきりと言葉で伝えましょう。相手が「~はどう?」と提案してくれると、他にアイデアがあるときにも「いいよ」と言って自分の意見を言わない人もいますが、タンデム学習ではそれはよくありません。タンデム学習はパートナーと協力しながら進める学習ですから、パートナーとの関係がよいものであればよりよく学ぶことができます。無理をして、相手に合わせすぎるとうまく行かなくなりますから、自分の考えをきちんとパートナーに伝えましょう。

3)「生の」情報をたずねましょう。

パートナーはあなたが学習する言語文化圏にいます。つまり、パートナーはいつもあなたに目標言語文化圏の生の情報を与えられるということです。あなたが日本にいたら、そのような生の情報を手に入れるのは難しいでしょう。タンデム学習の機会を利用して、パートナーに目標文化について興味があることをどんどん聞いてみましょう。

4)訂正の仕方について考えましょう。

言語を学ぶ上で正確に話せるようになることはとても大切なことです。ですから、間違いを直してもらうことも大切です。しかし、自分の文がどのくらい正確かということにばかり注意を払っていると、会話の内容は面白くないものになってしまったり、話すときに間違えることを恐れるようになってしまいます。また、訂正する側もパートナーが話している最中に会話を止めてまで訂正するのは躊躇われると思います。訂正の仕方は学習目的によって違います。例えば、できるだけたくさん目標言語で会話することを目的とするのであれば、会話で意味交渉に支障をきたす間違いがなければ特に訂正しなくてもいいです。しかし、もし間違いを訂正してもらいたいのであれば、会話中でもすぐに訂正する方法以外に、会話が終わってから訂正するという方法もあります。パートナーがどのような訂正を望んでいるかをあらかじめ話し合っておくといいでしょう。間違ったところだけをリキャスト(会話を中断せずに正しい言い方で言い返すこと)して、できるだけ会話を中断せずに訂正したり、間違ったところをメモしておき、後で教えてあげるなどの方法もあります。

5)セッションのために準備をしましょう。

タンデムでの学習時間を有効に使うために、次のセッションに向けてかならず準備をしましょう。たとえば、次の回で、あるテーマについて話すことが決まっていたら、そのテーマについて、何をどのように話すのか(もし写真やウェブサイトを使う場合はその紹介の仕方も考えましょう)やパートナーに質問したいことを準備しましょう。また、自由に内容を決める場合にも、いざセッションで話し始めると話すことがない、ということにならないようにきちんと準備しましょう。たとえば、次のセッションのために、a)目標言語で短い文章を書き、パートナーにメールをする(次回のセッションでパートナーに訂正してもらう)、b)インターネットから興味のあるテキスト(新聞、漫画、レシピ、広告、映画や本の批評等)を見つけ、わからないところをチェックしておく(次のセッションでわからなかった箇所をパートナーに教えてもらう)等、自分で次のセッションに向けてかならず準備しておきましょう。

6)学習を振り返りましょう。

学習中はその場のパートナーとのコミュニケーションを成り立たせることに必死になり、その過程でパートナーからもらった訂正や教えてもらった新しい言葉がその場限りのものとなってしまいがちです。セッションの際に自分がとったメモやチャットのログを見直してパートナーからもらったフィードバックを振り返りましょう。学習日記に新しく学んだ言葉を書き出して分類したり、間違った文法を整理したりすると、知識の定着に役立ちます。時間がない人はセッションの会話をスマホに録音しておいて空いた時間に聞き直すのも役に立ちます。

7)日本語(母語)も積極的に使いましょう。

あなたが目標言語を上達させたいと思っているのと同じように、パートナーもあなたとの学習で日本語を上達させたいと思っています。ですから、パートナーの日本語学習時間はできるだけ日本語(母語)を使ってあげましょう。あなたが日本語で話したり書いたりしたことからパートナーは学ぶことができます。また、パートナーの日本語レベルが低いときは、あなたの話した日本語をパートナーが全て正確に理解することは難しいですが、日本語だけでなんとかコミュニケーションができたという経験をすることは言語学習の自信になります。あなた自身の目標言語学習の場合もそうではないでしょうか。たとえば、パートナーが母語(=あなたの目標言語)で説明した内容をあなたがわからなかった時、すぐに日本語に言い換えてしまったらどう思うでしょうか。もう一度ゆっくり母語(=パートナーの学習言語)で言ってほしかったと思うのではないでしょうか。パートナーがなにを望んでいるか聞き、母語も上手に使いましょう。

8)パートナーを積極的にサポートしましょう。

タンデム学習は互いがサポートすればするほど、互いにとって良い学習になりますから、パートナーを積極的にサポートしましょう。パートナーが話している間に間違ったところをメモしておいてパートナーの発話が終わってから教えてあげる、パートナーが言えなかった言葉やわからなかった表現をチャットに書いて教えてあげるなど、積極的にサポートしてあげましょう。また、パートナーに自分が言ったことがわかったか確認したり、何か質問がないかを聞いてみましょう。

9)文法の質問をされて答えられない時は素直にそう言いましょう。

タンデム学習でのパートナーは、外国語教育のトレーニングを受けた語学の先生ではありませんから、文法のルールなどについて聞かれてうまく答えられないのは当然です。わからない時は「わからない」と素直に言って、一緒に文法書を見たりしましょう。あるいは、パートナーは文法解説はできませんが、文が正しいかどうかを判断することはできますから、自分で文を作って正しいかどうかをパートナーに確認してもらうのがいいでしょう。タンデム学習のパートナーには間違いを気にせず話せたり、友達関係が作れたりするといった別のメリットがあります。このようなメリットを活かす学習活動をした方がいいでしょう。

10)パートナーとの言語レベルの差を気にせずに学習しましょう。

タンデム学習ではパートナーと言語レベルの差がある場合がほとんどです。仮に、自分のドイツ語レベルがパートナーの日本語レベルよりも低いからといって、落ち込んだり、気後れする必要はありません。タンデム学習では、パートナーと同じ学習活動をする必要はありません。例えば、パートナーは日本語の新聞記事を読んで、その話題についてディスカッションし、あなたは初級の教科書にある場面を使ってロールプレイの練習をしてもいいのです。パートナーが自分よりも日本語ができるとわからないことを日本語で質問できると言うメリットがあります。反対に、デメリットはパートナーが日本語を使うことが多くなり、あなたが日本語を使う機会が減るということです。大切なことは、あなたはできるだけドイツ語を使うようにすることと、どんな時なら日本語を使用してもいいかをパートナーと合意しておくことです。反対に、自分のドイツ語レベルの方がパートナーの日本語レベルよりも高い場合はパートナーができるだけたくさん日本語の発話ができるように配慮してあげるといいでしょう。

11)安全なトピックを選びましょう。

少なくとも最初は、政治や宗教といった際どい話題は避けたほうがよいでしょう。セッションを通じてパートナーのことが徐々にわかってくれば、そのような話題も話せるようになるでしょう。