国際協力
本学では独立行政法人国際協力機構(JICA)等の開発援助機関と連携し、開発途上国での国際協力活動に対し積極的に取り組んでいます。
1. 協力協定
本学は、2005年6月に株式会社国際協力銀行(JBIC)との間で海外経済協力分野に関する協力協定を、また、2006年11月には、独立行政法人国際協力機構(JICA)九州国際センターとの間で連携に関する覚書を締結しました。これらを踏まえ、2010年9月にJICAとの連携協定をJICA理事長(緒方貞子理事長(当時))と本学総長(有川節夫総長(当時))が署名締結し、その後2回の更新を経て、現在に至ります。
本協定は、JICAとの連携を通じ、開発途上国における国際協力事業の質の向上のみならず、本学による国際貢献、学術研究及び教育の発展に寄与することを目的としており、JICAが有する開発途上国での実践的経験を本学の教育・研究に活用する一方、本学のこれまでの海外での教育・研究の蓄積や人材を国際協力事業に活用することにより、グローバルな課題解決に貢献していくことが期待されています。
2. 技術協力プロジェクト
本学は開発途上国において政府開発援助(ODA)による様々な技術協力事業に参画しています。技術協力事業は、主に開発途上国の現場に日本人の専門家を派遣して、相手国の行政官や技術者(カウンターパート)に必要な技術や知識を伝えるとともに、彼らと協働して現地に適合した技術や制度の開発、啓発や普及などを行う「専門家派遣」や、開発途上国から各専門分野の中核を担う人材を研修員として日本に招き、それぞれの国が必要とする知識や技術に関する研修を行う「研修員受入れ」等の形態がありますが、「専門家派遣」や「研修員受入」、また必要な機材の供与を含め、様々なメニューを最適な形で組み合わせて実施するものが「技術協力プロジェクト」(略称「技プロ」)と呼ばれ、ODAによる技術協力事業の中心的なものです(詳細については次のリンクを参照ください)。
技術協力プロジェクト
本学が参画している主要な「技術協力プロジェクト」は次の通りです。
(1)エジプト日本科学技術大学(E-JUST)
本プロジェクトは、エジプト・アラブ共和国アレキサンドリア県ニュー・ボルグ・エル・アラブ市に位置するエジプト日本科学技術大学(E-JUST:Egypt-Japan University of Science and Technology)において、質の高い研究・教育の実践、国内外の関係機関との多層的なネットワークの形成、適切な大学運営等を通じ、同校がエジプト国内トップレベルの研究大学として確立されることを目指すものです。また、これらの活動を通じ、E-JUSTが輩出する産業・科学技術人材が、将来中東・アフリカ地域の高等教育セクターや産業界の全体の発展に貢献していくことも期待されています。
本学は、日本国内の13大学で構成される国内支援大学の総括幹事校の一つとして本プロジェクトに参画しており、E-JUSTの電子・通信工学専攻、電力工学専攻、化学・石油化学専攻に係る支援(教員派遣、長期研究員受入、共同研究、本学とのダブル・ディグリープログラムの開設等)を実施しています。また、本学内に「日本エジプト科学技術連携センター」(略称「E-JUST連携センター」)を設置し、本プロジェクトを強力に推進しています。
E-JUST連携センター
E-JUSTの詳細については、以下のリンクをご参照ください。
E-JUSTホームページ(英語)
E-JUSTプロジェクト
(2)マレーシア日本国際工学院(MJIIT)
マレーシアは、知識集約的な生産拠点の構築を目指していますが、産業界が求める高度な知識を有する人材が不足していたことから、マレーシア工科大学の下に日本型工学教育を導入し、高い生産性と競争力を有する人材育成を行う目的で、2011年9月にマレーシア日本国際工科院(MJIIT, Malaysia-Japan International Institute of Technology)が設立されました。本プロジェクトでは、マレーシアの経済・社会の開発に貢献する、実践的で最先端技術の開発研究能力を備えた人材の育成を目指し、MJIITでの教育に必要な資機材の調達と、教育課程の整備を支援しました。
本学はMJIIT設立の準備段階から機械精密工学科や顕微鏡研究室などの組織設立と運営に協力してきました。顕微鏡研究室の立ち上げには、本学からMJIITに教員を派遣して基本構想の立案から、機材の選定、導入後の研究室運営、電子顕微鏡の操作から研究の指導まで幅広く支援を行ってきました。この結果、学内だけでなく在マレーシアの企業からも共同利用が増えつつあります。
MJIITの詳細については、以下をご参照ください。
MJIITホームページ(英語)
MJIIT整備事業
(3)アセアン工学系高等教育ネットワーク(AUN/SEED-Net)
1980年代後半から高度経済成長を続けていたASEAN(アセアン)諸国は、1997年の通貨財政危機により大きな打撃を受けました。持続的・安定的な経済開発とそれを支える工学系人材の養成への認識の高まりから、日本政府はアセアン諸国の人材育成への協力を提唱し、工学系高等教育による人材育成事業として、アセアン10カ国の工学系トップ大学19校を対象とし、その教育・研究能力の向上を目的とした「アセアン工学系高等教育ネットワーク(AUN/SEED-Net)」プロジェクトが開始されました。2003年から実施されたフェーズ1(2003年~2008年)を経て、現在、フェーズ4(2018年~2023年)が実施されています。
本学は、本プロジェクト開始当初から約20年に亘り、国内支援大学(現在14大学)の一つとして、アセアン諸国の協力対象大学からの長期・短期の研修員受入れや、調査団員や短期専門家としての教員の派遣等の協力を実施してきました。また長年の協力を通じて築かれたアセアン諸国の大学とのネットワークは、本学の様々な国際協力・国際交流活動を実施の上で大きく寄与しています。
AUN/SEED-Netの詳細については、以下をご参照ください。
AUN/SEED-Netホームページ(英語)
AUN/SEED-Netプロジェクト
3. SATREPS(地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム)
地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(Science and Technology Research Partnership for Sustainable Development, 略称「SATREPS」)は、環境、エネルギー、生物資源、防災、感染症の分野における地球規模課題を視野に、開発途上国の社会的ニーズを基に日本の研究機関と開発途上国の研究機関が協力して国際共同研究を推進することによって、両国の人材育成及び研究能力の向上を図り、これら諸課題の解決に繋がる新たな知見の獲得及びその成果の社会実装(具体的な研究成果の社会への還元)を目指すものです。また、SATREPSは、JICAとJST(国立研究開発法人科学技術振興機構)及びAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)が共同実施機関として連携の上、実施しています。
SATREPSの詳細については、以下をご参照ください。
SATREPSについて
本学はこれまでに以下のSATREPSの研究課題(プロジェクト)を受託しています。
- 東南アジア海域における海洋プラスチック汚染研究の拠点形成(2019年度採択)
- 東アフリカ大地溝帯に発達する地熱系の最適開発のための包括的ソリューション(2019年度採択)
- ミャンマーにおけるイネ・ゲノム育種システム強化(2017年度採択)
- ベトナム、カンボジア、タイにおけるキャッサバの侵入病害虫対策に基づく持続的生産システムの開発と普及(2015年度採択)
- 高効率燃料電池と再生バイオガスを融合させた地域内エネルギー循環システムの構築(2014年度採択)
- ベトナム北部中山間地域に適応した作物品種開発(2010年度採択)
- レプトスピラ症の予防対策と診断技術の開発(2009年度採択)
4. 草の根技術協力事業
草の根技術協力事業とは、日本の大学、地方自治体、NGO等がこれまで培ってきた知見・技術・経験を活かした開発途上国への協力活動をJICAが支援し、JICAと共同で実施する事業です。
草の根技術協力事業の詳細については、以下をご参照ください。
草の根技術協力事業って何?
本学はこれまでに以下の草の根技術協力事業(プロジェクト)を受託しています。
- フィリピン・不法定住家族の再定住地建築計画のための人材育成支援事業(2017年度採択)
- バングラデシュ・ICTの高度活用によるBOP農民の組織化支援(2013年度採択)
- ネパール・ルンビニ県ナワルパラシ郡における地域社会の砒素汚染対策能力向上事業(2009年度採択)
- バングラデシュ・ICTを活用したBOP層農民所得向上プロジェクト(2009年度採択)
5. 留学生事業
本学では政府開発援助(ODA)による技術協力や無償資金協力によるプログラムを活用し、開発途上国から多くの留学生を受け入れています。関連する主要な留学生受入プログラムは次の通りです。
(1)技術協力による主要な留学生受入プログラム
(2)無償資金協力による留学生受入プログラム
(3)関連留学生受入実績
上記プログラム等に基づく近年の本学の開発途上国からの留学生受入実績は次の通りです。
年度 | 技術協力 | 無償資金協力(JDS) |
---|---|---|
2015 | 44名 | 20名 |
2016 | 37名 | 22名 |
2017 | 66名 | 18名 |
2018 | 56名 | 20名 |
2019 | 72名 | 27名 |
(注)数値は各年度の新規受入れ人数
6. その他の協力
(1)JICA課題別研修プログラムの実施
JICA課題別研修プログラムとは、開発途上国が抱える様々な課題解決に資するため、特定の課題に対する研修プログラムを日本側から開発途上国に提案し、参加を希望する複数の国から研修員を日本に招へいし実施するプログラムです。対象とする課題は、病院管理のノウハウ、地方自治制度、また伝統的な農業技術から最先端の科学技術に至るまで、多岐に亘る分野をカバーしています。
JICA課題別研修の詳細については、以下をご参照下さい。
課題別研修
本学では、1970年に「国際地熱研修コース」を実施して以降、約50年にわたり地熱エネルギー分野の課題別研修を実施しています。近年実施のプログラムは次の通りです。
課題別研修「地熱資源エンジニア」(2019~2021年度)
(2)JICA日系社会研修プログラムの実施
全世界の日系人は360万人(うち中南米213万人)と推定されています。日系人は、多くの場合居住国において日系社会を形成しており、日本語教育や日本文化の次世代への継承に積極的に取り組んでいます。
JICA日系社会研修プログラムとは、このような中南米地域の日系社会と日本の連携に主導的な役割を果たす方(日系人に限定されない)への技術協力を通じ、日系社会の発展と移住先国の国造りに貢献することを目的としています。
日系社会研修の詳細については、以下をご参照下さい。
日系社会研修員受入事業
本学では、大学病院を中心に、保健医療分野の日系社会研修を継続的に実施しています。直近の本学実施による日系社会研修は次の通りです。
- (集団コース)「早期胃癌の内視鏡診断と治療」(2020年度)
(注)2020年度はCOVID-19の影響のため、遠隔研修の形態で実施しました。 - (集団コース)「早期胃癌の内視鏡診断と治療」(2019年度)
- (集団コース)「病院食(栄養管理)」(2019年度)